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愛媛県伊予郡松前町。広がる田んぼの真ん中に、ひときわ目を引く建物がある。
ここは、ペンキ屋「渡部工業」の拠点。
代表の渡部一さんが、ゆくゆくはショールームにしたいと話す場所だ。
「ちょうどいい広さで、雰囲気も気に入ってるんです。せっかくだから人が来られる場所にしたくて」
周囲に高い建物もなく、静けさに包まれた立地。訪れた人がほっとできるような空気がここにはある。
愛媛県伊予郡松前町。広がる田んぼの真ん中に、ひときわ目を引く建物がある。
ここは、ペンキ屋「渡部工業」の拠点。
代表の渡部一さんが、ゆくゆくはショールームにしたいと話す場所だ。
「ちょうどいい広さで、雰囲気も気に入ってるんです。せっかくだから人が来られる場所にしたくて」
周囲に高い建物もなく、静けさに包まれた立地。訪れた人がほっとできるような空気がここにはある。
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今日の現場は、自社の外壁塗装
取材当日は、渡部工業の外壁塗装の真っ最中だった。
「今日は自社の壁を塗ってるんですよ。塗装のショールームにもしていきたいから」
そう話す渡部さんの目は、まるで自宅を整える人のようにやさしかった。
この日は3人で作業。普段は2人1組のペアで現場をまわることが多いという。
渡部さんは全体を見ながらサポートに回り、ペンキの調合や進行の指示を出す。
「素材によって、使うペンキの濃度も、道具も違うんです。今日はローラーと刷毛ですね」
今日の現場は、自社の外壁塗装
取材当日は、渡部工業の外壁塗装の真っ最中だった。
「今日は自社の壁を塗ってるんですよ。塗装のショールームにもしていきたいから」
そう話す渡部さんの目は、まるで自宅を整える人のようにやさしかった。
この日は3人で作業。普段は2人1組のペアで現場をまわることが多いという。
渡部さんは全体を見ながらサポートに回り、ペンキの調合や進行の指示を出す。
「素材によって、使うペンキの濃度も、道具も違うんです。今日はローラーと刷毛ですね」
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ちょうどいい道具、ちょうどいい大きさ
広い面を塗るには大きいローラーだろう、と思っていたら使っているのは意外にも小ぶりなもの。
理由を聞くと、「塗りやすいんですよね。これが一番ちょうどいい」と即答だった。
ペンキの吸収量、伸びのよさ、手に馴染む感覚。
「これで何件塗ってきたか…現場って、結局“慣れた道具”が一番強いですからね」
ローラーを転がすスピードも音も、見ていて心地いいほどに一定だった。
その隣では、細かな縁を刷毛で丁寧に仕上げるスタッフ。役割分担も、阿吽の呼吸。
ちょうどいい道具、ちょうどいい大きさ
広い面を塗るには大きいローラーだろう、と思っていたら使っているのは意外にも小ぶりなもの。
理由を聞くと、「塗りやすいんですよね。これが一番ちょうどいい」と即答だった。
ペンキの吸収量、伸びのよさ、手に馴染む感覚。
「これで何件塗ってきたか…現場って、結局“慣れた道具”が一番強いですからね」
ローラーを転がすスピードも音も、見ていて心地いいほどに一定だった。
その隣では、細かな縁を刷毛で丁寧に仕上げるスタッフ。役割分担も、阿吽の呼吸。
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技術というより、“染みついた感覚”
「塗るコツってありますか?」と聞いてみた。
「うーん…難しいなぁ。でも、ただ“きれいに見えるように”しか考えてないですよ」そう言って、またすぐに作業へ戻る。
淡々と、黙々と、でも壁の表面には確実に「仕事」が重ねられていく。
はみ出さず、ムラなく、無駄なく。
本人たちは「こだわりは特にないですよ」と笑うけれど、その動きこそが職人技そのものだった。
技術というより、“染みついた感覚”
「塗るコツってありますか?」と聞いてみた。
「うーん…難しいなぁ。でも、ただ“きれいに見えるように”しか考えてないですよ」そう言って、またすぐに作業へ戻る。
淡々と、黙々と、でも壁の表面には確実に「仕事」が重ねられていく。
はみ出さず、ムラなく、無駄なく。
本人たちは「こだわりは特にないですよ」と笑うけれど、その動きこそが職人技そのものだった。
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仕上がりの美しさは、下地で決まる
塗装の基本は、「養生」「下塗り」「中塗り」「上塗り」の順。
一見すると色を塗るだけに見える作業も、実は何層にも積み重ねられている。
「下地がきちんとしてないと、あとが全部ダメになるんです」
渡部さんはそう言って、特に最初の工程に力を入れている。
たとえば、素材によってペンキの吸い込み方は違う。
仕上がりの均一さも、塗料の乗り具合も、この下地づくりにかかっている。
地味だけど、絶対に手を抜かないところに、見えないプロの哲学があった。
仕上がりの美しさは、下地で決まる
塗装の基本は、「養生」「下塗り」「中塗り」「上塗り」の順。
一見すると色を塗るだけに見える作業も、実は何層にも積み重ねられている。
「下地がきちんとしてないと、あとが全部ダメになるんです」
渡部さんはそう言って、特に最初の工程に力を入れている。
たとえば、素材によってペンキの吸い込み方は違う。
仕上がりの均一さも、塗料の乗り具合も、この下地づくりにかかっている。
地味だけど、絶対に手を抜かないところに、見えないプロの哲学があった。
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塗れるものは、すべてが対象
「どんな塗装が多いですか?」という問いに、
「本当にいろいろ。強いて言うなら“店舗”が多いかな」と渡部さん。
住宅だけでなく、店舗や倉庫、事務所の外壁や内装、看板やポスト、金属まで。
「塗れるものは全部対象。来たものには全部対応するつもりです」
この一言に、ペンキ屋としての自負と懐の深さが感じられた。
地元・松前町を中心に愛媛県内がメインだが、県外にも出張する。
「呼んでもらえるのはありがたいですね」
信頼が技術を超えて、人を遠くへも運ぶ。
塗れるものは、すべてが対象
「どんな塗装が多いですか?」という問いに、
「本当にいろいろ。強いて言うなら“店舗”が多いかな」と渡部さん。
住宅だけでなく、店舗や倉庫、事務所の外壁や内装、看板やポスト、金属まで。
「塗れるものは全部対象。来たものには全部対応するつもりです」
この一言に、ペンキ屋としての自負と懐の深さが感じられた。
地元・松前町を中心に愛媛県内がメインだが、県外にも出張する。
「呼んでもらえるのはありがたいですね」
信頼が技術を超えて、人を遠くへも運ぶ。
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いい現場って、どんな場所?
「楽しい現場ってありますか?」と尋ねると、少し照れたように笑って、
「環境がいいところですね。近くに美味しいごはん屋さんがあるとか、景色がいいとか」
その言葉には、仕事そのものだけでなく、“現場での時間”を大切にしている気配があった。
過酷な日もある。真夏の炎天下も、冬の冷たい風の日もある。
そんな日々の中に、小さな楽しみを見つけていくのも、続ける力のひとつなのかもしれない。
いい現場って、どんな場所?
「楽しい現場ってありますか?」と尋ねると、少し照れたように笑って、
「環境がいいところですね。近くに美味しいごはん屋さんがあるとか、景色がいいとか」
その言葉には、仕事そのものだけでなく、“現場での時間”を大切にしている気配があった。
過酷な日もある。真夏の炎天下も、冬の冷たい風の日もある。
そんな日々の中に、小さな楽しみを見つけていくのも、続ける力のひとつなのかもしれない。
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こだわりは、“染み込んだ判断力”
どのペンキを使うか、どの道具を選ぶか。
そこに“流儀”や“こだわり”のようなものがあるのかと聞いてみた。
「いや〜、大したことないですよ。毎回、素材と現場を見て判断するだけで」
と軽く言う渡部さんだが、その“判断”こそが経験に裏打ちされたスキルだ。
現場での即断力、素材に合わせた選択、全体の進行管理。
それらすべてが、“言語化できない精度”で体に染み込んでいる。
それが、職人という生き方の本質なのかもしれない。
こだわりは、“染み込んだ判断力”
どのペンキを使うか、どの道具を選ぶか。
そこに“流儀”や“こだわり”のようなものがあるのかと聞いてみた。
「いや〜、大したことないですよ。毎回、素材と現場を見て判断するだけで」
と軽く言う渡部さんだが、その“判断”こそが経験に裏打ちされたスキルだ。
現場での即断力、素材に合わせた選択、全体の進行管理。
それらすべてが、“言語化できない精度”で体に染み込んでいる。
それが、職人という生き方の本質なのかもしれない。
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それぞれの働き方を尊重する
この日現場にいた3人のうち、渡部さんは作業着姿だったが、実際に塗るわけではないという。
「お客さんや取引先の人に会うことも多いので、現場ではこの服は着ないです。汚れるしね」
スタッフには、「動きやすい格好で来てもらえばいい」と伝えている。
みんなが気持ちよく働けること。
それが、自然体のチームワークを生んでいるようだった。
現在のスタッフは6人。
多くが5年以上の付き合いで、過去の現場での縁や紹介がきっかけ。
現場にいた2人に話を聞くと、「社長は行動力のある人」と笑顔で答えてくれた。
それぞれの働き方を尊重する
この日現場にいた3人のうち、渡部さんは作業着姿だったが、実際に塗るわけではないという。
「お客さんや取引先の人に会うことも多いので、現場ではこの服は着ないです。汚れるしね」
スタッフには、「動きやすい格好で来てもらえばいい」と伝えている。
みんなが気持ちよく働けること。
それが、自然体のチームワークを生んでいるようだった。
現在のスタッフは6人。
多くが5年以上の付き合いで、過去の現場での縁や紹介がきっかけ。
現場にいた2人に話を聞くと、「社長は行動力のある人」と笑顔で答えてくれた。
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松前の地で、塗り重ねてきた信頼と人の縁
渡部さんが塗装業を始めて、もう20 年ほどになる。
これまでには、塗る技術以上に「人との関わり」で苦労した時期もあったという。
だからこそ今、共に働くスタッフとの縁や、関わってくれるすべての人とのつながりを、何よりも大切にしている。
無理にルールで縛るのではなく、それぞれの個性や働きやすさを尊重する姿勢が、自然体のチームワークを育てているように見えた。
そしてなにより、代表の渡部さん自身が、とても軽やかで穏やかな人柄だ。
静かに見守りながら、芯のある姿勢で現場を整えていく。
この日、塗り替えていたのは自社の外壁。
会社のイメージカラーである“オレンジ”を選び、未来への意思もそっと重ねていた。
目立たなくても、確かな技術と人柄が、信頼を生み、町の風景を静かに彩っていく。
そんな仕事を、これからもこの地で、淡々と、丁寧に。
撮影・記事=星野尾カメラマン
松前の地で、塗り重ねてきた信頼と人の縁
渡部さんが塗装業を始めて、もう20 年ほどになる。
これまでには、塗る技術以上に「人との関わり」で苦労した時期もあったという。
だからこそ今、共に働くスタッフとの縁や、関わってくれるすべての人とのつながりを、何よりも大切にしている。
無理にルールで縛るのではなく、それぞれの個性や働きやすさを尊重する姿勢が、自然体のチームワークを育てているように見えた。
そしてなにより、代表の渡部さん自身が、とても軽やかで穏やかな人柄だ。
静かに見守りながら、芯のある姿勢で現場を整えていく。
この日、塗り替えていたのは自社の外壁。
会社のイメージカラーである“オレンジ”を選び、未来への意思もそっと重ねていた。
目立たなくても、確かな技術と人柄が、信頼を生み、町の風景を静かに彩っていく。
そんな仕事を、これからもこの地で、淡々と、丁寧に。
撮影・記事=星野尾カメラマン