熊本市西区　　陸屋根のFRP防水工事

風雨から建物を守り、人々の暮らしの安全を根底から支える「防水」という仕事。
その道のプロフェッショナルとして、熊本を拠点に九州全域で活躍する「いたさか工業」の代表、板坂謙志郎（いたさか けんしろう）氏の仕事場を訪ねた。
１５歳でこの世界に飛び込み、以来、２０年以上にわたって防水一筋で歩んできた板坂氏。
その経験と技術、そして何よりも「人」を大切にする熱い思いに迫る。

第２章：過酷な下積み時代が育んだ「負けない精神」

１５歳から２３歳までの８年間、板坂氏はひたすら下積みを経験した。
当時の勤め先は、まさに「昭和」の気風が色濃く残る職場だったという。
「ほぼ休み無く、仕事量も多い会社でした。全てにおいて厳しかった」。理不尽な思いをすることも多々あり、今振り返ってもそのきつさは尋常ではなかったと語る。
「辞めたいと思ったこともありました」。
幾度となく心が折れそうになっただろう。

しかし、板坂氏は決して諦めなかった。
「仕事では負けたくなかった」。その一心で、彼は食らいついた。
この過酷な下積み時代が、板坂氏の強靭な精神力を培った。理不尽な状況にも耐え抜き、人一倍の努力を重ねてきた経験が、今の彼を形作っている。
「やり切ったことが、今に生きています。今苦しい時があっても難なく乗り切れます。」その言葉には、並々ならぬ自信と、あらゆる困難を乗り越えてきた者だけが持つ揺るぎない覚悟がにじみ出ていた。
この下積みがなければ、今のいたさか工業は存在しないだろう。

第４章：ＦＲＰ防水の真髄：下地処理とプライマー塗布（作業工程①）

今回の取材で、板坂氏が手掛けていたのは屋根のFRP防水の施工現場だった。
ＦＲＰ防水とは、Ｆｉｂｅｒ Ｒｅｉｎｆｏｒｃｅｄ Ｐｌａｓｔｉｃｓの略で、繊維強化プラスチックを用いた防水工法のこと。
ガラス繊維などの補強材とポリエステル樹脂を組み合わせることで、軽量でありながら強度が高く、耐久性、耐水性、耐食性に優れた防水層を形成する。
硬化が早く、複雑な形状にも対応できるため、ベランダや屋上など、様々な場所で採用されている。

まず、作業は既存の防水層の撤去から始まる。劣化した防水層を剥がし、新たな防水層を形成するための下地を整える。この下地の張り替えは、防水層の性能を最大限に引き出すための重要な工程だ。
下地が不十分だと、いくら良い材料を使っても、本来の防水性能を発揮できないばかりか、早期の劣化に繋がる可能性もある。板坂氏は、この下地処理に一切の妥協を許さない。

下地が整ったら、次にプライマーを塗布する。プライマーは、下地と防水材との密着性を高めるための接着剤のような役割を果たす。
これにより、防水層が下地から剥がれるのを防ぎ、長期にわたる防水効果を保証するのだ。板坂氏は、刷毛やローラーを巧みに操り、ムラなく丁寧にプライマーを塗布していく。
この丁寧な仕事ぶりこそが、いたさか工業の防水工事の品質を支えている。

第６章：ＦＲＰ防水の精度を高める：研磨と中塗り（作業工程③）

ガラスクロスが貼り終わり、樹脂が硬化したら、次はディスクグラインダーで凹凸を研磨する作業に移る。
ガラスクロスを貼っただけでは、どうしても表面にわずかな凹凸ができてしまう。この凹凸を平滑にすることで、見た目を美しくするだけでなく、その後の工程である中塗りやトップコートの密着性を高め、防水層全体の均一性を確保する。

研磨作業は、埃が舞い、体力を消耗する作業だ。
しかし、板坂氏は黙々とディスクグラインダーを操り、まるで芸術作品を磨き上げるかのように、防水層の表面を滑らかに仕上げていく。この細かな作業が、防水層の品質を左右する重要なポイントとなる。
研磨が終われば、いよいよ中塗りの工程だ。中塗り材は、防水層の厚みを増し、より高い防水性能を付与する役割がある。また、この層を塗ることで、ガラスクロスの繊維が見えなくなり、美観も向上する。
板坂氏は、熟練のコテさばきで、ムラなく均一に中塗り材を塗布していく。
この中塗りの出来栄えが、最終的な防水層の仕上がりを大きく左右すると言っても過言ではない。
本日は取材時間の都合上、この中塗りまで同行させていただいた。

第８章：信頼の右腕・前田來樹が語る「いたさか工業」の魅力

いたさか工業には、板坂氏の右腕として活躍する前田來樹（まえだ らいき）さんがいる。
前田さんは、別の防水職人の元で働いていたが、板坂氏の存在を知り、「板坂さんのもとで働きたい」という強い思いから、いたさか工業の門を叩いたという。

あれから６年。前田さんは「板坂さんのところで働けて自分はラッキーだ」と語る。
「こんなに防水のことで知識や技術がある人はいない。教え方もとても上手」
前田さんの言葉からは、板坂氏への深い尊敬の念が感じられた。前田さん自身、以前は「社会不適合者」だと思っていた時期もあったという。
しかし、いたさか工業に来てからは、仕事の技術だけでなく、社会のことや様々な物事の見方、常識なども板坂氏から学び、今では「人としてのスタートラインに立てるようになった」と感じているそうだ。

板坂氏と前田さんの間には、単なる雇用主と従業員の関係を超えた、強い信頼関係で結ばれていることが見て取れる。
二人の目標は「板坂さんと一緒に防水で関わる人を幸せにしたい」という熱い思いで一致している。

第１０章：お客様の「安心」を追求する防水職人の矜持

いたさか工業の強みは、FRP防水やウレタン防水をはじめ、あらゆる防水工法に精通していること。そして、下積み時代に誰にも負けない作業量をこなし、公共事業から民間工事まで、ありとあらゆる現場で経験を積んできた板坂氏の豊富な知識と技術力にある。
しかし、それ以上に、いたさか工業がお客様に選ばれる理由は、板坂謙志郎という人物そのものにある。

「人として信用される防水職人を目指している」という彼の言葉は、決して口先だけではない。お客様の大切な資産である建物を守り、そこに暮らす人々の安全を確保する。その責任を深く自覚し、一つ一つの仕事に真摯に向き合う姿勢こそが、いたさか工業の最大の魅力なのだ。

防水工事は、見た目では分かりにくく、その価値が評価されにくい仕事かもしれない。
しかし、その見えない部分にこそ、職人の真価が問われる。そして、いたさか工業は、その見えない部分にこそ、妥
協なきプロの仕事を提供し続けている。
建物の寿命を延ばし、大切な財産を守るために。そして何より、安心で快適な暮らしのために。
こんなにもお客様と従業員に誠実に向き合い、経験と技術、そして何よりも「人」としての信頼を積み重ねてきた板坂謙志郎氏に、ぜひ防水工事をお任せしてみてはいかがだろうか。

撮影・取材＝ＬＩＢＥＲＴＹ 柊平直樹